最初に断っておきます。このページは「なぜ気持ちがいいのか」を科学的に説明するものではありません。人の体の中で何が起きているかについて、私たちは確かなことを言える立場にありません。ここで書くのは、潰される側の材料がどういう構造をしているかと、その構造が手にどう返ってくるかだけです。読み物として読んでください。
そもそも、潰すために作られていない
気泡緩衝材は梱包材です。Sealed Air Corporation を出願人とする特許「Method for making laminated cushioning material」(発明者 Marc A. Chavannes・1959年11月27日出願/1964年7月28日登録)には、二枚のフィルムを貼り合わせて気泡の層をつくる方法が記されています。目的は、輸送中の衝撃を空気の層で受け止めることです。
日本では川上産業株式会社が「プチプチ」を1994年に自社の商品名として商標登録していて、同社の公式サイトには「一般名称は『気泡緩衝材』です」「プチプチと呼べるのは川上産業の製品のみです」と書かれています。本サイトが体験の名前を「ぷちっ」というオノマトペにしているのも、この区別を守るためです。
注目したいのは、遊び道具として設計されていないのに、世界中で同じ遊ばれ方をしているという点です。誰かが遊び方を広めたわけではありません。箱を開けた人が、それぞれ勝手にそうしている。
一、しきい値がある
指で押しても、しばらくは何も起きません。フィルムが伸びて、粒が横に逃げて、それでも押し続けたところで急に抜けます。押した量に対して、結果が比例していない。これがこの材料の肝です。
たとえば粘土なら、押した量と沈む量はだいたい比例します。押しただけ沈み、やめれば止まる。気泡緩衝材は違って、「何も起きない時間」のあとに「全部起きる一瞬」が来ます。手を動かしている最中に、自分の力ではないところで結果が確定する。この不連続さは、押した人が作ったのではなく、材料が持っている性質です。
二、音が結果を二重に報せる
抜けた瞬間には、指の感触と音が同時に来ます。同じ出来事が二つの感覚で届く、というのは日常ではあまりありません。鍵を回す、スイッチを入れる、缶を開ける——数えてみると、手応えと音が一致する行為は、どれも「作業が一段落した」ことを報せるものばかりです。
しかも気泡緩衝材は、粒ごとに音がわずかに違います。フィルムの厚みや空気の量が均一ではないからです。同じ動作を百回しても、返ってくる音は毎回少しずつ違う。本サイトでも、音を音源ファイルの再生ではなくその場の合成にしているのは、この「毎回わずかに違う」を作るためです。
三、終わりが見えていて、しかも失敗がない
一枚のシートには粒が有限個しかありません。潰した粒はへこんだまま残るので、残りがあと何粒かは見ただけで分かります。終わりが見えている作業は、途中でやめにくくなります。
同時に、この行為には失敗がありません。強く押しても、弱く押しても、順番が前後しても、誰も困らない。取り返しのつかない操作がひとつもない遊びというのは、実はそれほど多くありません。
本サイトでいちばん気持ちがいいのは、実は「全部潰し切った直後」だと考えています。まっさらなシートが下から滑り込んでくる瞬間に、もう一周やりたくなる。だから終わりを作らず、潰した跡を透明にせずへこんだまま残す作りにしました。
分からないことは、分からないままにしておく
「気泡緩衝材を潰すと落ち着く」という話は、日常会話ではよく聞きます。ただ、それを本サイトが事実として書くことはしません。人の体や心に対する働きを言うには、私たちが持っていない種類の裏づけが必要だからです。
言えるのは、材料の側の話だけです。しきい値があり、音と手応えが一致し、終わりが見えていて、失敗がない。この四つを備えた材料が身の回りにいくつあるかを数えてみると、そう多くないことが分かります。
さわって確かめる
- ぷちっ(気泡を潰す)— 30秒:「ゆっくり」モードに切り替えると、一粒の沈み込みと抜けが大きくなります。しきい値の話は、この状態がいちばん分かりやすいです。
- ぺりっ(保護フィルムを剥がす)— 30秒:同じ「一度きり」でも、こちらは連続した一本の線として進みます。
- むにゅっ(押してこねる)— 30秒:しきい値が無い側。押した量と沈む量が比例するとどう感じるかを、続けて試すと違いが分かります。
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